前回、当院で「顎口腔系(あごや歯)」の臨床実験を行い、肩こりの激変や小顔効果など驚きの結果が出たお話をしました。実はその背景には、東谷先生(元:かみ合わせ研究所東谷歯科医院院長)から以前うかがっていた、これまでの歯科の常識を覆す新たな知見があったのです。
今回は、なぜ「歯の噛み合わせ」が、脳や自律神経、そして全身の歪みにまで影響を与えてしまうのか、そのメカニズムを分かりやすく紐解きます。

1. ピンクの紙カチカチ…だけでは分からない「アゴの本当の動き」
歯医者さんで治療を受けた後、ピンクや青色の薄いセロハン用紙のようなものを噛んで、「は〜い、カチカチしてくださーい」と言われた経験は誰しもあるはずです。
しかし、東谷先生曰く、「これだけでは、本当の噛み合わせのズレは分からない」のだそうです。
一般的な歯科医学や、治療に使う「咬合器(こうごうき)」というアゴの模型(※下の写真、於:東谷歯科医院2017年)では、下顎は「前に滑って動く(あるいは左右に動く)」ものとして作られています。しかし、日本直立歯科医学研究会と東京工業大学(現:東京科学大学)の共同実験によって、新たな事実が明らかになりました。

人間が食べ物を噛むとき、下顎はただ前後に動くのではなく、「斜め後ろに向かって楕円を描くように動く」。さらに、固定されていると思われがちな「上顎骨(上のアゴ)」も頭部の動きとして、下顎の動きに連動して「8の字ループ」の軌跡を描いて微細に動いている。
(おもしろいことに、この事実は従来の歯科界ではなかなか理解されなかったそうですが、東大の物理学の先生に話すとすんなり理解が得られたそうです。まさに身体の興味深いバイオメカニクスです)
2. 髪の毛1本以下のわずかな干渉が「脳幹」に影響を与える
では、アゴが「斜め後ろ」に動くとき、何が問題になるのでしょうか?
もし、斜め後ろに動こうとする軌道上に、ほんのわずかでも「邪魔をする歯(干渉する歯)」があると、歯の根元にある三叉神経が瞬時に危険を察知し、歯がぶつかるのを防ごうと口の筋肉を緊張させます。
このわずかな「噛み合わせのスムーズではない動き」が起きると、身体は頭のバランスを保とうとして、全身をわずかにねじったり、傾けたりすることで代償(コントロール)しようとします。
そのねじれ・傾きが「後頭骨」と「頸椎1番(一番上の首の骨)」の間に生じた場合、そのすぐ上にある「脳幹(のうかん)」に不必要な物理的ストレスがかかってしまうのです。
脳幹に物理的ストレスがかかるとどうなる?
脳幹は、人間の生命維持のコントロールタワーです。ここにたとえば圧迫という物理的ストレスがかかると、以下のような自律神経・生命活動のコントロールを低下させる可能性があります。
- 呼吸が浅くなる、慢性的な鼻づまり(鼻閉)が起きる
- 血流や体温調節がうまくいかなくなる(冷え・のぼせ)
- 睡眠の質が落ちる、排泄機能が乱れる
当院でも後頭骨や頸椎1番の矯正(アジャストメント)を行うことで、これらの症状が劇的に改善するケースがあります。ここで考えないといけないのは、その歪みは、勝手に生じたものではないという事です。体の何かの影響で、結果として形成されたという事です。そして、そのゆがみ形成の真犯人のひとつとして「アゴの位置の不正(咬合不全)」が挙げられます。
3. なぜこの事実が広まらないのか?(アメリカの裁判の裏側)
これほど全身に影響を与える噛み合わせ治療ですが、実はこの「アゴが後ろに動くときの干渉を見つけ、治療できる歯科医」は、日本全国で数十人(奈良で2人)しかいないとのこと(2018年現在)。
なぜこれほど重要な事実が表立って議論されないのでしょうか?背景には歴史的な事情があります。
かつてアメリカで「歯列矯正と体調不良の関係」が裁判で争われた際、歯科矯正学会側は「両者は無関係である」と主張し続けました。もしこれを認めてしまうと、過去に矯正治療を受けた膨大な数の患者への賠償問題に発展してしまうため、現在の医療界でも「噛み合わせと全身の不調」は公に論じにくい雰囲気が残ってしまっているのです。
4. カイロプラクティックと最先端歯科の融合を目指して
実際の先進的な歯科治療では、クライアントの歯の模型を作り、実際に下顎を後ろに動かしてぶつかる場所を特定するそうです。そして、ビニール袋の薄さ(数ミクロン)ほどの驚くほど繊細なタッチで、歯の表面をシュッと磨くように削って調整を行います。
私たちカイロプラクターが、口腔内でどの歯が数ミクロン干渉しているかを完璧に特定することは容易ではありません。しかし、「手技療法によってアゴの緊張を和らげ、頭蓋骨の一次呼吸(微細な動き)を整えるアプローチ」は十分に可能です。
当院で行う頭蓋・頸椎の矯正と、頭蓋の動きを理解されている素晴らしい歯科医師の先生方との連携が実現して、これまでどこに行っても治らなかった体調不良や慢性痛にとても対応しやすくなりました。
お口の違和感や、首・肩の頑固なコリ、自律神経の乱れでお悩みの方。ぜひ一度、当院のトータルコンディショニングをご体験ください。