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慢性痛の原因は複雑な足し算の総和

人の体は複雑系である:「牛乳の賛否」や「腰痛の原因」から考える白黒つけない思考法

何か問題が起きたとき、私たちはつい「これが原因だ!」と1つの答えに白黒をつけたがります。しかし、世の中の多くの問題、とりわけ「人の体は複雑系である」という事実は、単純な白黒(○か×か)の論理だけで割り切れるものではないという事を意味します。今回は、物事を論理的に考える2つの思考法「演繹法(えんえきほう)」と「帰納法(きのうほう)」をベースに、「牛乳の賛否」や、当院でもよくご相談いただく「腰痛の本当の原因」について紐解いていきます。

「演繹法」と「帰納法」、それぞれの落とし穴

私たちが科学的に考え、結論を導き出すとき、大きく分けて次の2つの考え方を使っています。どちらの考え方も大切ですが、それぞれに特有の「落とし穴」があります。

  • 演繹法(数学の公式型):「一般的原理(前提)」から論理を積み重ねて結論を導く方法です。
    (例:背を伸ばすにはカルシウムが必要だ + 牛乳にはカルシウムが豊富だ = したがって牛乳を飲めば背が伸びる)
    【落とし穴】もし、前提としている「一般的な法則や知識」が間違っていた場合、導き出される答えも100%間違いになってしまいます。
  • 帰納法(理科の実験型):「個々の具体的な事実(経験)」をいくつか集めて、共通する一般的な法則を導く方法です。
    (例:私は中学の3年間、毎日大量に牛乳を飲んで身長が28センチ伸びた + 周りの友達もそれなりに伸びていた = したがって牛乳は背を伸ばす効果がある)
    【落とし穴】集めた事例のなかに「例外」があるかもしれないため、導き出した結論はあくまでも「とりあえず今のところは、そう言えそうだ」という仮説に過ぎません。もしかしたら、牛乳ではなく「同時期におやつ代わりに食べていた煮干し」のおかげだった、という別の要因(例外)が隠れている可能性もあるのです。

時代とともに変わる「新事実」と牛乳の歴史

近年、分子栄養学などの発展に伴い「日本人の多くは牛乳の乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)を持っていない」「牛乳をやめたら子どもの皮膚症状や下痢が治まった」という事例が数多く報告されるようになりました。これらは、従来の演繹法の前提(牛乳=身体に良い)を揺るがす新しい事実です。

かつてのアスベストやフロンガスが、登場当時は「夢の物質」と絶賛されながらも、後に深刻な害が判明して姿を消していったように、時代が進むにつれて新事実が明らかになることは珍しくありません。しかし、牛乳はそれらに比べて圧倒的に長い歴史を持っています。もし100%悪いものであれば、とっくに人類の歴史から淘汰されているはずです。つまり、現代になって「これまで見落とされていた悪い側面がいくつか見つかった」という捉え方が自然でしょう。

何でもかんでも「100%良い」「100%悪い」と極端に結論づけるのではなく、「どの年齢の、どういった体質の人にとっては、どのような面で良し悪しがあるか」と冷静に場合分けをして考えていく視点が必要です。

「私の腰痛の原因は何ですか?」に対する正しい答え

この「白黒つけたがる心理の落とし穴」は、治療の現場でも全く同じように見られます。当院でも、患者様から「私の腰痛の原因は何でしょうか?」と聞かれることがよくあります。

「骨盤が歪んでいるから」「ヘルニアがあるから」「筋肉が硬いから」と、何か1つの決定的な原因を言ってもらった方が、スッキリして分かりやすいかもしれません。しかし、実際の身体はそんなに単純ではありません。

冒頭でもお伝えした通り、人の体は複雑系であり、さまざまな要因が足し算(あるいは掛け算)のように複雑に積み重なった結果として、初めて痛みが引き起こされます。

  • 骨格の歪みや関節の可動域制限(構造的な要因)
  • 慢性的な筋肉の過緊張や筋力低下(機能的な要因)
  • 分子栄養学的な視点での栄養不足や、内臓への負担(化学的な要因)
  • 日常生活の癖、睡眠不足、精神的なストレス(環境・心理的な要因)

これらが複雑に絡み合っているため、「原因はこれだけ!」と1つに特定して断言するような答え方は、決して正しくありません。あえて言うならば「これが第一原因(引き金)と思われます。ただし、背景にはこれだけの要素が重なっています」。これを前提としつつ、優先順位をつけてアプローチしていく事こそが、身体を根本から改善するために不可欠な思考です。

まとめ:部分ではなく、あなたの身体の「全体」を見る

健康情報も、身体の痛みも、目に見える一部分だけの「白黒」に囚われると、本質を見失ってしまいます。牛乳が良いか悪いかも、その人の体質や消化吸収の能力、その他さまざまな要素を鑑みると、プラスとマイナスどちらに傾くか?実際は微妙なものです。腰痛の改善も、痛む部分だけを見るのではなく、骨格、筋肉、内臓、環境、そして心の状態まで、全体を多角的に評価する事がうまく改善する道です。

「私の身体は今、どんなバランスの崩れが起きているんだろう?」
そう一歩立ち止まって、ご自身の身体の声に耳を傾けてみてください。当院では、複雑に絡み合うあなたの不調の原因を、一つひとつ丁寧に紐解くお手伝いをしています。

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