「朝起きたらなぜか腰が重い」「特に痛めるようなことはしていないのに、ずっと肩が痛い」
このような慢性的な痛みに悩まされている方はとても多いものです。多くの慢性痛は、これといった思い当たる原因がないことがほとんどです。では、なぜそこに痛みが出てしまうのでしょうか?今回は、当院が日々の施術で患者様にお伝えしている、慢性痛の「本当の原因」についてお話しします。
痛みの原因は「動きの悪い場所」にある
本来、痛みが出ない体というのは、全身が柔軟にしなやかに動くものです。しかし、年齢を重ねるごとに、体の一部に「動きの悪い箇所(可動性減少)」が出てきてしまいます。
特によく見られるのが、以下のような関節の詰まりや動きの悪さです。
- 腰仙関節:腰椎5番と仙骨の間(腰の土台)
- 仙腸関節:骨盤にある関節(真ん中の仙骨と左右腸骨の接触面)
- T/L(胸腰移行部):胸椎12番と腰椎1番の間(背中と腰の境目)
- C/T(頸胸移行部):頸椎7番と胸椎1番の間(首と背中の境目)
- O関節(後頭環椎関節):後頭骨と頸椎1番の間(頭と首の境目)
なお、これは年齢だけの問題ではありません。若い世代であっても、特定のスポーツをハードに続けている場合は、体に大きな歪みが生じているケースが多々あります。
なぜ「痛い場所」を触らないのか?
どこか一部に本来の動きをしない場所ができると、体は別の場所を余計に動かすことで全体のバランスを取ろうとします。慢性の痛みの多くは、この「代わりに過剰に動かされている場所(専門的には可動性亢進といいます)」に発生します。
つまり、「痛い場所」は被害者であり、原因(加害者)は「別の動かない場所」なのです。
ご自身ではどこが動きの悪い場所なのか分かりません。そのため、私たち手技療法家が手で検査をして原因箇所を探し出し、元の正常な動きに近づける作業を行います。全体がまんべんなく動くようになれば、特定の一部への負担が消え、関節痛などは速やかに緩和されていきます。
当院の施術では、痛い場所そのものを触らないことが多くあります。初めて来られた患者様から「先生、そこは痛くありません!もっと下の方です」と言われることがありますが、痛いところを直すためには、その痛みを引き起こしている「真の原因」にアプローチする必要があるのです。
レントゲンには写らない、医療機関の盲点
この「関節の動きの悪さ」は、レントゲンやMRIといった画像診断には写りません。そのため、多くの医療機関では、痛む場所に直接電気を当てたり、マッサージや牽引をしたりします。また、自宅でのストレッチ指導も、痛む場所に直接働きかけるものであることがほとんどです。原因が置き去りのままでは、本質的な改善には繋がりません。

良かれと思ってやっているその運動、本当に合っていますか?
性格が真面目な方ほど、「体にいい」と教えられたエクササイズを一生懸命に続けられます。しかし、もしそれを続けていても痛みが変わらない、あるいは悪化しているのなら、まずすべきはいったん中止してみることかもしれません。当院に来られた方には、今まで良かれと思ってしていたことは、一度すべて白紙に戻していただいています。
施術をしていて「普通ならとっくによくなっているはずなのに、治りが遅いな」と感じるケースがあります。詳しくお話を伺うと、「前の治療院で腰痛には腹筋をしろと言われたので、毎日30回がんばっています」とおっしゃることがあります。
実はその方の状態によっては、腹筋をすることでかえって痛みを増やしていることがあるのです。「今は腹筋を休んで、むしろお腹をストレッチしてください」とお伝えするだけで、すんなり痛みが解決することも珍しくありません。
(参考)間違えやすい腹筋の落とし穴
反り腰タイプの方であれば、腹筋を鍛えて反りを緩和させることは腰痛改善につながります。しかし、普通に上体を起こす腹筋運動をすると、お腹だけでなく「大腰筋(だいようきん)」という筋肉まで一緒に鍛えてしまいます。この大腰筋は、実は腰の反りをさらに強めてしまう筋肉です。
つまり、正しいやり方を知らずに腹筋を行うと、大腰筋の作用によって痛みを悪化させる原因になります。もし反り腰改善のために腹筋を行うのであれば、大腰筋を働かせない工夫が必要です。
【正しい腹筋の一例】
1. 足を台の上に乗せ、股関節と膝を90度に曲げます。
2. おへそが見えるところまでゆっくり頭を起こします。(それ以上高く上げる必要はありません)
3. ゆっくりと元の位置に戻します。
※ただし、体を丸める、腹筋をする、中腰になる‥などの体の使い方は、椎間板に問題のある人では悪化させます。このようなことをする前に、常に鑑別(原因の細分化、見極め、評価)が必要ですので、しっかり検査をしてくれる徒手療法家などの専門家にご相談してください。
体からのサインに耳を傾けて
痛む場所をグイグイ揉んだり、自己流のストレッチを頑張りすぎたりすることは、時に回復を遅らせる原因になります。あなたの痛みの「本当の原因」がどこにあるのか、まずは体のバランスを見直してみませんか?気になる症状が続いている方は、いつでもお気軽にご相談ください。