先日、明後日から開催される「関西プロゴルフグランドシニア選手権大会」に出場予定の現役プロゴルファーの方が来院されました。
お悩みは、「スイング時に右股関節にうずくような痛み、さらに右の太ももからすねにかけてズキッとした強い痛みが出る」という、大会直前としては非常に危機的な状態でした。
1. 身体が資本のプロの世界における情報交換
プロゴルファーの世界は身体が資本です。選手同士でも「あの鍼が効いた」「その痛みは仙腸関節痛だ」「〇〇市に腕の良い治療家がいる」といった情報交換が日常的に、非常にシビアに行われているそうです。
そんな高い審美眼を持つプロの世界だからこそ、私たち徒手療法家は、部分的なマッサージやお茶を濁すような施術ではなく、一本筋の通った明確な原因の見立てを行い、その上でアプローチする必要があります。
2. 当院での段階的なアプローチと原因の「見立て」
今回のケースでは、下肢への放散痛やスイング時の連動性を考慮し、物理的領域(徒手療法・身体操作)と生化学的領域(栄養)の双方から以下のように組み立てていきました。
- 筋・筋膜の処理: 検査により小殿筋と中殿筋に明確なトリガーポイントを確認。ここを的確に処理した段階で、まず「歩行時の痛み」が消失しました。
- 関節と神経の調整: スイング時の下腿の痛みを軽減させるため、仙腸関節の調整、および腓骨神経のマニピュレーションを実施。さらに、連動の起点となる胸椎、肋骨、距骨(足首)の微調整を行いました。
- 身体操作(運動療法)の提案: 右股関節へかかるメカニカルなストレスを最小限に抑えるため、バックスイング時における「左側屈の入れ方」について僭越ながら提案させていただきました。すると選手は「なるほど、これはシニア以前にしていたスイングです。これだと股関節に負担がない。これが良いのか!」と深く納得されていました。
- 生化学的(栄養)アドバイス: 大会期間中のパフォーマンス維持と組織の早期リカバリーを狙い、分子栄養学的な観点から「いま必要な栄養素」についてもお伝えしました。

3. 道具(引き出し)の多さが「今」を救う力になる
もし今回の臨床で、筋肉を緩めるだけの技術しか持っていなければ、歩行時の痛みは取れてもスイング時の強烈な痛みは残ったままでしょう。逆に関節の矯正(アジャストメント)しかできなければ、トリガーポイント由来の痛みを取りこぼしていたかもしれません。さらに、スイングという運動パターン(身体操作)への介入や、回復力を高める栄養の知識がなければ、明後日からの大会への送り出しとしては不十分だったはずです。
整形外科領域だけでは手の届かない部分、そして単なる「部分的なほぐし」では太刀打ちできない領域に対して、どれだけ多角的な視点からアプローチの優先順位を組み立てられるか。これこそが、当院が最も大切にしている臨床思考力です。
直前での劇的な痛みの軽減に、プロの先生も非常に喜んで大会へと向かわれました。選手が本来のパフォーマンスを発揮できるよう、これからも持てる武器をすべて動員してサポートしてまいります。