人間の身体には、常に内部環境をベストな状態に保とうとする「ホメオスタシス(恒常性)」という仕組みが備わっています。その代表例が、血液の酸塩基平衡(pHバランス)です。

私たちの血液は、常にpH 7.4の弱アルカリ性になるよう厳密にコントロールされています。このバランスが少しでも崩れて体液が酸性やアルカリ性に傾くと、全身の細胞に大きな負担がかかり、頑固な疲労感や様々な体調不良を引き起こす原因になります。

今回は、分子栄養学の視点からも非常に重要な「体液の酸塩基平衡」と、それが崩れることで起こる不調のメカニズムを解説します。


体液のバランスを揺るがす「アシドーシス」と「アルカローシス」

血液のpH(7.4)を基準として、体内を酸性側に傾けようとする状態をアシドーシス、塩基性(アルカリ性)側に傾けようとする状態をアルカローシスと呼びます。アシドーシスとアルカローシス|捨てる(3) | 看護roo![カンゴルー]

実際に血清のpHが7.4未満に低下した状態(アシデミア)や、7.4より上昇した状態(アルカレミア)は、全身の細胞にとって極めて異常な環境です。これらは呼吸不全や腎不全など重篤な疾患の結果として生じることもあり、医療現場でも重要な治療指標とされています。

日常の体調不良の背景としても、これらのバランスの乱れ(特に酸性化への傾き)が関わっているケースが少なくありません。

⚠️ 傾き方によって異なる自覚症状

  • 代謝性アシドーシス:吐き気、嘔吐、激しい疲労感が起こりやすく、体内の酸を追い出そうとして呼吸が通常よりも「速く、深く」なるのが特徴です。そのため、非常に口呼吸しやすい状態になります。
  • 呼吸性アシドーシス:頭痛や錯乱、頭がボーっとするような症状がみられ、呼吸は「浅く、遅く」なります。二酸化炭素(CO₂)を体外にうまく吐き出せない(換気障害)状態になります。こちらの場合も口呼吸になりやすいですが、息苦しさを和らげるためなど、いくつかの理由によって生じます。

体内をリセットする主役「重炭酸イオン」と腎臓の働き

なぜ私たちの身体は、酸性食品(肉や砂糖など)を食べたり疲労が溜まったりしてもpH7.4を維持できるのでしょうか?それは、血液中に含まれる「緩衝系(かんしょうけい)」という中和システムが働いているからです。

このシステムにおいて、最も大きな中和効果を持っているのが重炭酸イオン(HCO₃⁻)です。重炭酸イオンは体内の過剰な水素イオン(H⁺/酸性の元)を受け取ると、化学反応を起こして「水(H₂O)」と「二酸化炭素(CO₂)」に姿を変えます。

HCO₃⁻ + H⁺ ⟶ H₂O + CO₂↑ (二酸化炭素として呼吸で排出)

この、体内の酸性を打ち消すために不可欠な重炭酸イオンを主に産生し、コントロールしているのが腎臓の尿細管です。つまり、体液のバランスを守るためには、腎臓や尿細管の機能が正常であることが極めて重要なのです。


アシドーシスが起こる2つのルート

体液が酸性に傾いてしまう原因には、大きく分けて「呼吸の問題」と「代謝の問題」の2つのルートがあります。

① 呼吸性アシドーシス(換気不足によるCO₂の蓄積)

肺での換気が十分にできず、本来吐き出されるべき二酸化炭素(酸性物質)が体内に蓄積することで起こります。呼吸器系の問題だけでなく、横隔膜をはじめとする呼吸筋の障害、呼吸筋の疲労、自律神経の乱れ(呼吸中枢の命令低下)などによっても肺胞の換気量が低下し、この状態を招くことがあります。

② 代謝性アシドーシス(酸の過剰産生・排泄障害)

呼吸以外が原因で、体内で処理しきれない酸性物質(不揮発性酸)が過剰に作られたり、重炭酸イオンが失われたりすることで起こります。
体液が酸性に傾くと、身体は代償機構として二酸化炭素を激しく排泄しようとするため、呼吸が激しくなり、自覚症状として強い呼吸困難感や疲労感を覚えることもあります。


体液の酸性化と「カリウム」の深い関係

分子栄養学において見逃せないのが、体液のpHバランスとミネラル(特にカリウム)の関係性です。一般的に「アシドーシス(酸性)は高カリウム血症を伴う」という格言があります。

代謝性アシドーシスが生じるような病態では、細胞の傷害や腎機能の低下が起きやすいため、血液中のカリウム濃度が上がりやすくなります。さらに、細胞の外(血液)に水素イオン(H⁺)が増えると、電気的なバランスを維持するために、水素イオンが細胞内に入る代わりに細胞内からカリウム(K⁺)が細胞外へと追い出されてしまう性質があります。

数値としては、pHが0.1低下するごとに、血清カリウム濃度が0.6mEq/Lも上昇すると言われています。慢性的な疲労感や筋肉の異常な緊張の裏には、こうした細胞レベルでのミネラルの大移動が起きている可能性があるのです。


「構造」を整え、「栄養」で細胞の環境を守る

「寝ても疲れが全く取れない」
「呼吸が浅く、常に身体がこわばっている感じがする」

こうした慢性的な不調は、単なる筋肉のコリだけでなく、今回解説したような体液のpHバランスの乱れ(アシドーシス傾向)や、それを中和するために腎臓・呼吸筋に過度な負担がかかっているサインかもしれません。

いくらマッサージで外側の筋肉をほぐしても、細胞を取り巻く環境(pHやミネラルバランス)が乱れたままでは、身体のホメオスタシスはうまく働きません。

広陵コンディショニングでは、カイロプラクティックによる骨格調整や呼吸筋(横隔膜など)のアプローチで物理的な換気能力を高めつつ、分子栄養学に基づいた食事・栄養のアドバイスによって、体内の環境を内側から弱アルカリ性(pH7.4)の健康な状態へ整えるサポートをしています。内側と外側の両面から、本当に動ける快適な身体を作っていきましょう!