2026年6日に第1回目の開催を控えた、日本カイロプラクティック師協会(JSC)西日本支部主催の「臨床研究会」。開催が近づいてきた今回は、私が日々の臨床現場で最も大切にしている「臨床のさじ加減」について、ある言葉を交えながらお話しします。
1. 白黒(あるなし)ではなく、グレーの「濃淡」を観る
かつて作家の阿佐田哲也氏は「麻雀は濃淡だ」という言葉を遺しました。物事を単純な「ある・なし(白黒)」だけで捉えるのではなく、状況に応じたリスクとリターンの微妙なバランス、あるいは牌が山に残っている確率の高低(濃淡)を読み切る。この判断の精度こそが打ち手の腕である、という意味です。

これは、私たちの臨床においても全く同じことが言えます。
カイロプラクティックの創始者であるD.D.パーマーは「カイロプラクティックはアートだ」と言いました。これは、施術が単純にパターン化できるものではなく、クライアントさま一人ひとりの身体の状態に合わせた微細なさじ加減や直感力、あるいは職人技のような要素が必要であるということを意味しています。
2. 慢性領域にこそ求められる総合的な「絵の具」
急性の不調や救急救命の領域であれば、病院の検査をやり尽くすことで、原因となった大きな要素が白黒はっきりすることがほとんどです。しかし、私たちが日々向き合う「慢性の体調不良」や「慢性痛」は、一つの要素だけで終わりになるケースはまずありません。様々な小さな要素が複雑に足し算された結果として、その不調が生じています。
特に、病院などを経て代替医療の施術院に足を運ばれるクライアントさまの多くは、この「複雑な足し算(濃淡)」が色濃く出ている傾向にあります。
だからこそ私は、クライアントさまが話す内容、醸し出している雰囲気、視診で捉えたお身体の状態や動きの癖などを、白黒の世界ではなく「グレーの濃淡の度合いがどうなっているか」という視点で観察します。そして、以下の3つの領域から総合的にグラデーションを読み解いていきます。
- 徒手療法の領域(構造的・物理的な濃淡)
- 生化学の領域(栄養状態や体内環境の濃淡)
- 心理学の領域(精神的・環境的ストレスの濃淡)
3. 臨床の腕とは、施術計画という「絵」を描き分ける力
これらの情報をもとに、私はその方のための「施術計画」という1枚の絵を描いていきます。
病院での検査結果や、私たちの徒手検査を踏まえたとき、その絵は決して最初から1つの正解だけで済むとは限りません。セッションを重ね、お身体の反応(濃淡の変化)を見ながら、バージョン1、バージョン2、バージョン3と、その都度最適にアップデートした絵を描き直していく柔軟性が必要です。
来月6日から始まる臨床研究会では、こうした単なる「症状に対するテクニックの当てはめ(白黒思考)」から脱却し、目の前のクライアントさまの個別性に合わせた「濃淡の読み解き方と施術計画の組み立て方(アート)」を、参加される先生方とじっくり深めていきたいと考えています。
教科書通りのマニュアルだけでは太刀打ちできない慢性症状を、プロとしてどう紐解いていくか。当日、先生方と熱いディスカッションができることを心より楽しみにしております。