私がこれまで多くの先生方を見聞きし、また自分自身が歩んできた経験を踏まえて、「施術者・セラピストが辿る成長のロードマップ」についてお話しします。
最初からカイロプラクティックやオステオパシー(西洋医学)、あるいは鍼灸(東洋医学)の学校に入っていれば、慢性の不調に対する基礎的な知識や技術は身につきます(とはいえ学校で「慢性腰痛の治療法」という授業はないため、卒業後にセミナー等で磨くことになります)。
しかし、そうした学校ではない入り口からスタートし、真摯に慢性痛と向き合ってきたセラピストは、大抵以下のような段階(フェーズ)を経験しながら成長していくのではないでしょうか。
第1段階〜第2段階:筋肉から関節へのパラダイムシフト
- 第1段階(筋肉主体のアプローチ): 最初は「凝っているところをどう柔らかくするか」に終始します。トリガーポイントの本を片手に、何筋が痛みの原因かを追い続け、筋肉を緩めるテクニックを探します。
- 第2段階(関節へのアプローチ): 関節を動かすことで痛みが劇的に改善することを知ります。〇〇法といった技術セミナーに通い出します。ただ、その多くはカイロやオステオパシーの技術に由来しており、後に「もっと良心的なセミナーがあったのか」と気づくのもこの時期です。
- 第X段階(生体力学への関心): バイオメカニクスや重心、生理学に関心が向きます。代償動作や各種反射の結果として筋肉が緊張している意味を知り、「単に硬い筋肉を揉んでいた自分」にハッと目覚めます。
- 第XX段階(運動療法の導入): クライアント自身に動いてもらうことで、改善がよりスムーズに進む臨場感を経験します。

第3段階〜第4段階:生化学(栄養)、心理学への拡張と「危険なフェーズ」
- 第3段階(生化学・栄養領域への関心): 食事や栄養、毒素の影響に着目します。一般書レベルの知識では大きな改善に至らず、サプリメントの有効な投与量や網羅的な知識を学ぶため、専門家の門を叩く必要性を感じます。
- 第4段階(心理・メンタル領域): 心理系の領域に足を踏み入れますが、学んでも学んでも泥沼であることに気づきます。なかにはスピリチュアルな分野へ傾倒する人もいますが、臨床で本当に役立つものの選定が極めて重要になります。
- 第X・XX段階(エネルギー・物療・小道具): 量子力学という響きやエネルギー系に興味を持ったりします。あるいは、急性期に絶大な効果を発揮するマイクロカレント等の物理療法、音叉などの小道具による変化を見聞きします。
※ここで多くのセラピストが通る「危険なフェーズ」があります。プラセボや催眠の仕組みを理解してアプローチできているなら良いのですが、気づかずに術者とクライアントが共に催眠にかかってしまうと、術者は「超能力を宿した」と錯覚しがちです。その場の一時的な刺激によるビフォーアフターの変化に一喜一憂していると、数回通った時点でクライアントは見抜いて離れてしまいます。本質的な変化との判別が必要です。
第5段階〜第6段階:深部ファシアと「硬膜系」の壁
- 第5段階(末梢神経・内臓ファシア): 末梢神経の滑走障害や内臓のファシア(膜)の領域を知り、大いなる成長を感じます。しかし、まだまだ先があることには気づいていません。このあたりで「治療系」を極めるか「ビジネス系」に走るかの分岐点が訪れます。
- 第6段階(頭蓋骨・クラニアル): さらに治療系を邁進すると、難聴、耳鳴り、メニエール、顔面神経麻痺などの高難度なクライアントが来院し始め、うまくアプローチできず悩み出します。オステオパシーやカイロのDC(ドクター)のセミナーに通うものの、技術が難しく、効いているのか確信が持てない時期を過ごします。
しかし、ここで「硬膜系」の存在に気づき、臨床経験を積めば、確実に他では改善できない症例を克服することができるようになります。これこそが、来たる勉強会(JSC西日本支部主催:臨床研究会)で、講師の私が最も強調し、皆さまと共有したいポイントです。

第7段階〜その先へ
- 第7段階(中枢神経学): キャリックD.C.の機能神経学など中枢への入力に関心が向きます。『カンデル神経科学』などの分厚い専門書を前に途方に暮れたりします。この段階まで、こなせるセラピストはごく一握りです。
- 第8段階(仙人の境地): 山の麓で農業を始めたり、諸行無常の響きを感じたりするフェーズ。今の私にはまだよく分からない境地です(笑)。
知識の穴を埋め、共に成長するために
このように振り返ると、セラピストの成長には様々な過程、道筋があります。今回のJSC西日本支部主催の臨床研究会では、ディバーシファイドや上部頸椎はもちろん、内臓、頭蓋、末梢神経マニピュレーション、さらには分子栄養学やNLPまでを網羅していきます。
マニアックな名人技ではなく、応用医学に裏付けられた確かな基本。これらを共有することで、参加される先生方の知識や技術の濃淡を穴なく均一にするお手伝いができれば幸いです。また、私より濃い経験をお持ちの先生方からの知見も交え、最高の実践知を共有できる場にしていきましょう。