2026年6月からスタートする、日本カイロプラクティック師協会(JSC)西日本支部主催の「臨床研究会」。今回はそのコンセプトの根幹と、私が考える「臨床の基本(ベースライン)」についてお話しします。
かつてJSCでは「KOセミナー」という素晴らしい勉強会が行われていました。その内容は、欧米中心のカイロプラクティックやオステオパシーの徒手療法に加え、生理学や基礎医学をもとに病態メカニズムや禁忌症を学ぶという、非常に質の高いものでした。
今回の臨床研究会では、私が臨床で必須だと考えているテクニックや思考法の中から、当時のKOセミナーでは紹介しきれなかった「徒手テクニック」と「分子栄養学のアプローチ」を中心に網羅してお伝えしていきます。

私が考える「臨床の基本」とは
私が臨床現場においてベースライン(基本)だと考えているのは、以下のような包括的な視点と技術です。
- 徒手療法の領域: 触診などの検査が正確にでき、世界基準の徒手療法で行われている関節・筋肉・内臓・ファシア(膜)に対する各種テクニックを一通り行えること。それにより、身体のどのリージョン(病変)や機能低下にもアプローチできる状態。
- 生化学の領域: 生理学や分子栄養学の知識を用いて、検査データなどから不定愁訴を改善するためのプログラム(食事・栄養アプローチ)を組み立てられること。
- 心理学の領域: 心理学の基本的な知識や、身体に影響を及ぼす心理的トラウマの除去方法を学んでいること。
これらが揃って初めて、カウンセリングと視診の段階でクライアントさまの病態を8割がた把握できるようになります。
具体的なケース:頭痛へのアプローチ
当会で共有していくのは、決してマニアックな名人技ではなく、医学書に書かれている内容の応用推理や、基本テクニックの組み合わせです。たとえば「頭痛」を例に挙げると、以下のような段階的なロードマップを全員で共有していきます。
① カウンセリングでの絞り込み
- 効く薬剤・効かない薬剤(ロキソニンなどのNSAIDsが効くか、中程度以上の片頭痛で何が有効かなど)によって種類を識別する。
- 「お風呂に入ると楽になるか、悪化するか」でアプローチを絞り込む。
- 薬がほとんど効かず、後頭部にタテに手を置くような痛みの表し方をする場合の病態を予測する。
② 徒手検査と施術(物理的アプローチ)
- 触診で頸椎1番・2番の変位(前方回旋変位や側方変位など)を正確に捉え、それを矯正するテクニックを持っている。
- 大後頭神経のマニピュレーションにより、大後頭神経痛を的確に改善できる。
- 蝶形骨の7病変を触知し、クラニアル(頭蓋)手技で修正できる。

③ 徒手療法で改善しない場合の「次の一手」(生化学的アプローチ)
- カウンセリングや各種データから「内分泌系の機能低下」を評価し、頭痛と紐づけて改善策を提案できる。
- 「閃輝暗点(せんきあんてん)」のメカニズムを、機能性低血糖によるストレス ➡ 脳下垂体の膨張 ➡ 視交叉の圧迫 ➡ 偽の視覚信号(ノイズ)の発生、という流れで説明でき、ある種のミネラルが著効することを知っている。
④ それでも改善しない場合の深い視点(毒素・心理トラウマ)
- 薬剤、重金属、農薬などの「毒素への暴露」を疑い、その解毒(デトックス)アプローチを知っているか。
- 胸郭や胃・十二指腸などの内臓に影響を及ぼしている「心理的トラウマ」のつながりを理解し、内臓マニピュレーションや心理セラピーを施せるか。
相互補完し合い、臨床の穴をなくす場所に
こうした一連の流れは、ミキサーのカイロプラクターやオステオパスであれば、本来通常業務として日常的に行っている範囲のことかもしれません。しかし、これらすべてを疾患別に個人で網羅し続けることは大変な作業です。
だからこそ、臨床家同士で知識や技術を持ち寄り、相互補完し合うことが今回の研究会の最大の目的です。本当の上級テクニックは文章にするのも疲れるほどの領域になりますが、まずはベースとなる基本知識や手技の輪郭を私が提示することで、先生方の知識の濃淡を均一にするお手伝いができればと考えています。
当日は私が一方的に講義をするだけでなく、私よりも臨床歴が長く、濃い経験をお持ちの先生方も何人も参加されます。お互いの引き出しをオープンにし、最高の実践知を共有できる情報交換の場にしていきましょう。
【当研究会で扱う主なテクニックと知識】
ディバーシファイドテクニック / 上部頸椎テクニック / 内臓マニピュレーション / 頭蓋(クラニアル)テクニック / リンパドレナージ / アクティブリリースセラピー(ART) / ポジショナルリリーステクニック(PRT) / 末梢神経マニピュレーション / 脳神経のクラニアル / オーソモレキュラー(分子栄養学) / NLP(神経言語プログラミング)