2025年と2026年、JSC(日本カイロプラクティック師協会)で「腰下肢痛についての鑑別と施術方法」についてZOOMセミナーをさせていただきました。その内容の一部を、皆さまと共有します。
必要なことは個別にみるという事。「クライアントの訴えをもとに、なるべく幅広く検査をすることによって、可能な限り詳細なクライアントの身体状態の明細表を作りましょう」という事でした。スーパーで100人が買い物をすれば、その中身が100通りになるように、腰痛の経緯とメカニズムも100人いれば100通り存在します。当院が日々の臨床でどのように腰痛の「全体像」を描き、アプローチしているのかをお伝えします。
1. 腰痛の原因となる「3つの領域」
臨床現場において、私たちは鑑別検査をもとに、クライアイントさま一人ひとりの「痛みのメカニズム」を調べます。痛みの引き金は一つとは限りません。当院では以下の3つの領域を考慮し、幅広く原因を想定しながら検査で特定していきます。
- メカニカルな領域(物理的ストレス):物理的負荷の種類や量、その痕跡。徒手療法や神経学の視点から紐解きます。この領域では、おもに筋肉や骨格(関節)、さらに末梢神経系、体液循環について、注目します。
- ケミカルな領域(生化学的ストレス):生理学や分子栄養学の視点。食生活の問題が消化器系の負担につながり、結果的に関連する筋肉の問題が生じます。専門的には、内臓体性反射によって筋肉の機能障害や関節の機能障害が生じ、そののちに腰痛が発生するという流れを追います。
- 心理社会的ストレスの領域:心理的ストレスなどで、自律神経や内分泌系のバランスがくずれ、痛みを感じやすくなります。
【考察の例】8月下旬の来院された40代男性の前屈時での右腰の痛み
「仙腸関節の検査で陽性でした。問診の内容と合わせて、仙腸関節障害が確定的。つまりこの場合、メカニカルなストレス(特に仙腸関節)から主に痛みを拾ってます。
盆休み中は暴飲暴食気味だったようです。インナーユニットの機能障害が食生活の問題(内臓体性反射由来)からきているため、生化学的ストレスの影響もあります。
さらに、この数日の気温の急な変動で自律神経の負担などが痛みを修飾しているだろうことは、容易に想像がつきます。
……」
□このように、単にこっている筋肉を見つけてマッサージするという事ではなしに、なぜその筋肉が緊張しているのか?を考え、その根元、背景にある体の状況を生理学的に、神経学的に・・読み解きます。そうすることで、再発しないような改善の仕方を提供することが出来ます。
このようにその人の生活全体とそれによる体への影響を網羅的に評価することで、腰痛の全体像を適切にとらえ、より根本的に腰痛改善の道筋を立てる事ができます。
2. なぜ画像診断だけでは腰痛が治らないのか?
腰痛の権威である整形外科ドクターも言われている通り、画像で見える腰痛(原因が特定できるもの)はわずか15%ほどです。残りの85%の領域を、私たちカイロプラクターなどの徒手療法家がどう扱うかが重要になります。
当院では、第一に「物理的ストレス(負荷)がどこに最もかかって痛みをひろっているのか?」を考えます。
- 侵害受容器(痛みを感じるセンサー)の多い椎間関節への負荷
- 椎間板の変性による痛み
- 整形外科ではほとんど評価されていない仙腸関節(ここも痛みのセンサーが多いです)
- 整形外科で評価・治療対象となりづらい筋・筋膜(ファシア)
※侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の鑑別など、整形外科での診察や連携が必要なケースもあります。
3. インナーユニットの機能低下と徒手療法の必要性
腹横筋などのインナーユニットが働かない状態で、アウターの筋肉ばかりが働く状態が続くと、仙腸関節などの靭帯に大きな負荷が生じます。臨床上、このようなケースは非常に多く見られます。
根本改善には運動療法が必要ですが、「いったんできてしまった身体の癖(靭帯の短縮など)」に対しては、徒手療法が圧倒的に向いています。
ヨガやピラティス、ストレッチの達人であれば、ピンポイントで自分の身体の状態を把握して操作できるかもしれませんが、一般の方には私たち徒手療法家の介入が一定必要です。ケースによっては、徒手療法と運動療法を組み合わせることで、治り方のスピードがまったく異なる次元で進みます。
4. 5軒以上の病院を回っても治らない右腰の痛みの正体
整形外科領域や筋肉・骨格のみの原因追及にとどまっていると、一定数「どうしても治らないケース」が生じてしまいます。
例えば、「過去数年以上、5軒以上の病院や施術院をまわっても治らない右腰の痛み」というケース。
実はカイロプラクティックやオステオパシーの知見では、腹筋群と小腸、あるいは腹筋群と頭蓋の矢状縫合との関係性が深いとされています。また、ファシア(筋膜・組織のつながり)を考慮すると、腹膜系(内臓系)の施術をしないとまったく良い反応が起こらない腰痛があります。
✔ 盲腸の靭帯・腹膜の操作で痛みがきれいに取れる
このような長年の右腰の痛みに対し、盲腸の靭帯や腹膜の操作をするときれいに痛みが取れることがあります(もちろん、それに伴って生じていた仙腸関節や椎間板、筋筋膜の癖もすべて取り除きます)。
これは名人技が必要なわけではありません。「内臓マニピュレーション」という知識とテクニックを習得しているか、どうかの違いなのです。
5. まとめ:あなたに合わせた「適度なアプローチ」を導き出す
私たち術者が様々な可能性を考えて問診・検査した内容を、そのまま100%お伝えすると、おそらく情報が多すぎてクライアント様は混乱してしまいます。
当院では、そのような全体像の中から、その人にとっての「適度なレベル」で、いま克服すべき課題を分かりやすくお伝えすることを大切にしています。
あなたの腰痛の「明細表」を一緒に作り、根本からの改善を目指しませんか?どこに行っても良くならなかったその痛み、ぜひ一度当院にご相談ください。